【番外】鉄道車両における「鴨居」の話

鉄道車両の鴨居とは その他

はじめに

ある日、Stella Rail Sideでおなじみのねこ常務様からこんな連絡が来ました。

ねこ常務
ねこ常務

車内の記事で鴨居ってよく見るけど、何?

…というわけで、ねこ常務様からの振りに応える第2弾!車内の「鴨居(かもい)」について、今回は簡単にご紹介したいと思います。

まずは鉄道車内の場合

東急1500形の例
東急1500形の例

こちらをご覧ください。ドアの上に蓋がついていて、そこには路線図だったり、案内表示装置だったりが設置されています。

鉄道車両において、この部分を鴨居(かもい)と呼ぶことがとても多いです。

…少し含みのある言い方をしました。実は、この部分が鴨居です!と断言することができません。その理由について解説したいと思います。

日本建築における「鴨居」と「長押(なげし)」について

姫路城、天守閣より
姫路城、天守閣より

そもそも鴨居というのは建築用語で、特に日本建築で用いられる単語です。

鴨居は「障子やふすまなどの引き戸を支える溝部分の、上部側」のことを言います。上の写真の通り、引き戸を支える部分には溝があり、ここに障子を差し込んで滑らせることで開閉できます。ちなみに、あくまで上部が鴨居であり、下部は「敷居(しきい)」と言います。敷居は非常によく聞く機会がありますが、鴨居は聞く機会が本当に少ないですね。

で、鴨居はあくまでドアを支える溝を有した部位のことを指します。鴨居の上に、木の板などを張り付けてあることがしばしば見られますが、この部分は「長押(なげし)」と言います。

さて、鉄道車両に戻ります。

どこまでが「鴨居」なのか?

阪急8000系より
阪急8000系より

以上を踏まえると、上写真の通り、引き戸を支える溝の部分が鴨居となります。そうなってくると、上写真でLCDモニタが設置されている板面部分は「鴨居」ではないとも考えれます。何なら、「長押(なげし)」と呼ばれてもいいのでは?と。

…でも実際、この部分を長押と呼んでいるのを鉄道業界で見かけたことが、私はありません。

長押は元々は柱を支える構造部材として誕生したもので、部屋の4辺全周にわたって設置されていることが一般的です。構造材としての機能が不要になった後は化粧板として使用されており、長押自体は意匠性以外の目的はほぼありません(ささやかなものとして、ハンガーなどを吊るせる、という機能があります)。

鉄道車両においては、そもそも鴨居自体はこのフタの内側にあり、最近の車両においては溝があるわけではなく機構が直接収納されているので、厳密には「鴨居ですらない」とも言えます。ただ、一般呼称として鴨居と呼ばれることが多いです。昔の車両の場合はドアエンジンが座席下部などにあったため、実際にこの部分が鴨居でした。

また、このフタの部分はあくまで「点検蓋」です。開けるとモーターやベルト、シリンダなどが格納されています。そうなってくると、近年の車両では厳密な鴨居や長押という構造は、存在しないと言えるわけです。

ただ、呼び名が無いと不便なので、便宜上、いまだに「鴨居」あるいは「鴨居部」と呼ばれている、というのが実際の経緯ではないかと私は考えています。(あくまで個人的な考えであることを添えさせてください)

余談…自動ドア業界では?

仕事柄、ビルなどで用いられる「自動ドア」にもよくかかわるのですが、

実は自動ドア業界ではこの部分のことを「無目(むめ)」と呼ぶことが多いです。これについても実は強い違和感がありまして…。

日本建築では、無目というのは「溝のない鴨居」のことを意味しています。例えば、障子やふすまなどの引き戸ではなく、開き戸(ドアや窓)の場合、上部に溝は必要ありません。この場合に、「無目」と呼ばれます。

…でも自動ドアも鉄道車両と同じで、ドア構造は引き戸で、実際にこの部分にはドアハンガーやベルト、モーターが格納されています。点検ブタを閉めれば、引き戸が差し込まれた「溝型」をしています。

終わりに

…結局のところ、鉄道車両も自動ドアも、現在のドア上部分は「鴨居」でも「無目」でもないわけですが、通例的・便宜的に、鉄道車両の場合は「鴨居」、自動ドアでは「無目」と呼んでいる……という感じなのかな…と、記事を書いていて思いはじめています。機会があれば、鉄道設計に携わる人に直接そのあたりのお話は伺ってみたいなぁと思う次第です。

…ねこ常務、わかったかな?

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