はじめに
ねぶた祭と言えば、青森県は津軽地方の有名なお祭りです。これに合わせて、金魚ねぶたと呼ばれる灯篭が街並みを飾ります。
津軽地方の私鉄の一つ、弘南鉄道の大鰐線では、夏季に車内へ金魚ねぶたを吊るした「金魚ねぷた列車」を運行しています。無数の可愛い金魚の灯篭が車内を彩るだけでも楽しいのですが、休日などを中心に、車内灯を消灯して灯篭の明かりだけで運行する夜間特別ライトアップ運行が実施されています。詳細は弘南鉄道のウェブサイトからご確認いただけます。
というわけで、実際に2025年のライトアップ運行に乗車してきましたので、当ウェブサイトらしく車内の様子を中心にいくらかその雰囲気をご紹介できればと思います。
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まず、弘南鉄道には独立した2路線が存在しますが、どちらも使用されている車両は7000系と呼ばれるステンレス車両。かつて東急で運行されていた車両が使用されています。特に金魚ねぷた列車が走る大鰐線では、オリジナルのスタイルを内外に残した車両が使用されており、クーラーすら非搭載の、往年の東急電車を満喫することができます。2025年の金魚ねぷた列車は、外観が装飾されていない7039編成が使用されています。
それでは、早速その車内に入っていきたいと思います!

ライトアップ特別運行では車内灯が完全に消灯されており、車内は入ったばかりだとやや暗さが目立ちます。しかし金魚が照らす赤い光が、扇風機や窓からの風でゆらゆらと揺れ、床や天井に水面のようなゆらめきを照らす雰囲気はとても幻想的です。

こちらがその金魚ねぷた。紙でできた灯篭で、車内では電球色のライトが仕込まれ、荷棚や天井の枠などを使用して吊るされています。風鈴のように短冊がぶら下がっています。江戸時代からの伝統で、車内だけでなく中央弘前駅周辺の欄干などにも同様の装飾がみられました。

大鰐線は線路状態があまり良くないため、ゆったりと走る電車は大きく右に左に揺れますが、この揺れが金魚をゆらゆらと揺らしてくれるので、走行中はとにかく光の動きが美しく、夢心地の雰囲気が漂います。
特に、この車両ならではだと思うのが、「ステンレス無塗装」との相性の良さです。

7000系電車では、ドアや手すり、荷棚など、多くの部品がステンレス無塗装品が使用されています。通勤電車として見れば無機質な印象ですが、これに金魚ねぷたの赤い灯りが反射して、さらに車内はキラキラと輝いています。普段はスルーしがちな当たり前の車内設備が、灯りに照らされてとても美しく綺麗に見えるのが印象的でした。リンゴ柄の吊革との相性も抜群です。

ちょっと面白かったのが、中央弘前方の先頭付近の天井に、密集した金魚がぶら下がっており、ここだけ灯りが明滅していました。よく見るとすべての金魚に「JR東日本秋田支社」の文字が。普段は並走するライバルも、お祭りとなれば肩を組んで一緒に盛り上がるものなのかもしれませんね。
車内灯が消えると、駅が近づくたび車窓の明かりがいつも以上にまぶしく見えますし、逆に田んぼの真ん中を走っているときは、金魚をのぞけば光っているのは運賃表ぐらいで、灯りのありがたさを体感することもできました。
終わりに
青森の鉄道事情は厳しく、残念ながら大鰐線は2027年度末で運行が休止される旨が発表されています。もう数えるほどしか乗る機会は得られないであろう同線の、金魚ねぷた列車。2025年は8月31日まで運行されています。片道約35分の、穏やかで幻想的なひととき。もし機会が得られる方は、ぜひ一度ご乗車されてみてはいかがでしょうか?
その他
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