昭和の関西私鉄で見られた化粧板
昭和時代の高性能車両ではこぞってアルミデコラ板による化粧板が車内のデザインに用いられました。その際、各社それぞれのオリジナル柄が用いられています。
例えば、関西大手私鉄の化粧板ですと、昭和40~50年代製造車両は以下のようなデザインでした。
- 近鉄…木目模様
- 南海…木目模様
- 阪急…木目模様
- 京阪…薄緑色
- 阪神…薄緑色
このように、寒色系と木目系に大別できます。阪急はご存じのように木目を貫いていますが、昭和~平成にかけてアイボリーブームが押し寄せ、白色系の明るい内装にシフトしました。ところが令和になってふたたび木目模様が注目されています。今回はそのうち、近鉄と南海をピックアップしてかつての木目と現代の木目を比較したいと思います。
木目化粧板 昭和&令和
1、近鉄の場合
まずは近鉄から。平成中ごろには木目模様が一般通勤型車両からは消滅してしまったため、三岐鉄道に移籍した車両の例をご紹介します。どちらかといえば彩度の低い、落ち着きある縦向きの木目模様が採用されていました。南大阪線の6800系で採用されたようで、当時は明るい内装が非常に評判だったとか(鉄道ピクトリアル2024年8月号より)。天井にはコルク柄が用いられており全体的に茶色系の配色でした。
2020年代に入りVVVF車をリニューアルした際に、デザイナーの手が入った新たな内装が採用されましたが、こちらでは側壁の化粧板で再び木目模様が採用されています。木目は横方向に入ったものに変化しており、非常に明るいものが用いられています。落ち着きと、明るさを両立するような色合いで親しみが持てます。
2、南海の場合
続いて南海電車。こちらも現役は引退しており、大井川鉄道の21000系にのみ残っています。木目は落ち着いた配色ですが、柄を見ると阪急とおなじマホガニー柄なのが分かります。赤色のモケットとの相性はよく上品さがありました。このタイプは6100(現6300)系、7100系、22000系まで採用され、その後は薄茶色の別の模様に変化しています。
続いて8300系。近畿車両製のステンレス車両で、南海線、高野線の両方に導入されていますが、こちらでも木目の意匠が令和に入って採用されています。こちらは側壁面には採用されず、ドアと袖仕切りにアクセントとして用いられております。実はしっかり木目がプリントされているのですが、近鉄同様明るい色合いとなっているため、近くに寄らないと木目とわからない程度のさりげなさです。ところが床もフローリング調なため、結果的には全体的に木目を生かした雰囲気になりました。
まとめ
化粧板で表現できる色合いは印刷技術の向上で豊かになり、車内に求められるニーズも快適性が一層高まるなかで、落ち着きある雰囲気がひとつの流行になりつつあります。そんななか、まさかの木目調復活を果たした2例をご紹介しました。どちらも明るい木目に変化しています。人は自然に落ち着きを求めるものなのかもしれません。他の会社でもアクセントに木目が用いられる例はどんどん増えており、化粧板デザインの今後に目が離せません。
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