かつてはタバコが車内で嗜めた
久しぶりの特集記事は、「喫煙ルーム」です。
近年、健康増進法などの広がりによって喫煙環境の制限が進んでいますが、かつては街のあちらこちらでタバコを吸うのは当たり前でした。鉄道も御多分に漏れず、車内でも駅でも余裕でタバコが吸えましたが、いよいよその終焉が2024年にやってこようとしています。
今回は最後まで残った「喫煙ルーム」を簡単に取り上げたいと思います。
1、かつては座席でタバコが吸えた件
こちらは国鉄時代に製造された近郊型車両、111系の車内です。リニア鉄道館に保存されている車両で、かなり原形を留めているのですが、よく見るとボックス席の背面に灰皿がついているのが目に留まります。
こちらがその灰皿。JNRロゴが入ったもので、ロングシート部のほか、各ボックスの窓下にも同じものがついていました。
いまでも国鉄時代に製造され、その内装を留めている車両だと、ボックスシートの窓下にビス跡が残っていることがあります。1990年代まで見られた光景です。
また、特急車の場合は座席のひじ掛けに小さな灰皿がついていました。最後まで座席でタバコが愉しめたのはJR東海の新幹線700系です。こちらは車内記事がありますので、下記も合わせてご覧ください。
今も残る「喫煙ルーム」その1:東海道・山陽新幹線
こちらはJR東海の最新型新幹線「N700S」の10号車に用意されているグリーン車専用の喫煙ルームです。同系の場合、3号車・10号車(グリーン車)・15号車に喫煙ルームがあります。かつては7号車も喫煙ルームでしたが現在は閉鎖され、順次Sワーク車両の個室化されています。
内装は新幹線らしいシックなデザインで、小さなダウン照明が灰皿を照らします。出入口はガラス張りの自動ドアです。灰皿は当初3か所用意されていましたが、コロナ禍の人数制限時に2か所閉鎖され、1か所だけが使用できる状態です。
灰皿は開口部が大きく、内側に落とし穴があるタイプで、その手前に設置された手すりには点字でも灰皿の位置が示されています。揺れる新幹線の車内で点灯しないための工夫でもあります。
現在は人数制限こそ撤廃されていますが、スペースは狭く、大体3人でいっぱいになるので、外のデッキまで列ができていることもしばしば。グリーン車専用の喫煙ルームは比較的ゆったり利用できますが、8~10号車の利用客専用です。
今も残る「喫煙ルーム」その2:近鉄特急
近鉄特急では新幹線同様、喫煙車両が設置されていましたが、2020年1月末で終了。代わりにすべての特急編成に対して新規に喫煙ルームが整備されました。ゆえに喫煙ルームの歴史としてはかなり新しい設備となります。
一例として23000系「伊勢志摩ライナー」の喫煙ルームをピックアップ。新幹線と異なりかなりスペースは広く、また通路側・窓側も大きな窓が特徴で非常に開放感があります。車種によって使用は異なりますが、同タイプの場合は灰皿はなんと5か所も設置されています。また簡易腰掛が2か所に設置されており、普通車と共通のモケットが用いられています。
こちらがその灰皿。デザイン処理されたテーブルに埋め込まれるように設置されています。開口部は小さく、数が多い代わりに1つあたりのキャパシティは少ないものが用意されています。それにしても窓が大きく、一服する時間も素敵な旅の一コマになるようなサービス性が感じられます。
いよいよ見納め
2023年10月、健康増進志向を理由に東海道新幹線を走る新幹線の完全禁煙化が発表されました。
https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000042990.pdf
すでにJR東日本などの新幹線では完全禁煙化されており、それに追従する形で、2024年春頃に新幹線の車内でタバコが吸えなくなります。喫煙ルームは業務用室化され、非常時の備蓄が常備されるようです。
またそれを追いかけるように2024年1月、近鉄もすべての特急車に用意されている喫煙ルームを廃止すると発表しています。
https://www.kintetsu.co.jp/all_news/news_info/kitsuennshitsuhaishi.pdf
喫煙ルーム跡の活用については未定。短い期間で近鉄特急の喫煙ルームは役目を終えることに。
これも時代。かつてはタバコが当たり前でしたが、令和の時代は公共の空間では禁煙が常識となりつつあります。昭和の名残を楽しめるのもあとわずか。愛煙家の方々は流れる景色を見つめながらの1本を最後までお楽しみいただけたらと思います。
その他
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