はじめに
日立A-trainとは、アルミ合金を用いた車体製作の技術名称です。ダブルスキン鋼体と呼ばれるボディに対して、あらかじめ別途組み上げたモジュールを、ガイドに沿わせるかたちで固定できるためネジ締め工程等を減らし、合理化やデザイン性を高めたのが特徴です。90年代終盤以降に日立で製造された鉄道車両ではこの技術が用いられているケースが多く見られます。
先述のような技術により、車内デザインにおいてもアルミ部材を活かしたさまざまな特徴が見られます。今回はその細かな紹介ではなく、A-train構造の採用が確認されている車両の車内を集めてみました。モジュール化と聞くと同じような見た目ばかりになりそうな印象を受けますが、意外と個性的な車内をお楽しみください。
A-trainコレクション
JR九州815系
A-trainを代表するような車両で、アルミを活かした銀色基調の内装が採用されています。細かく見れば、天井材がパネル化され、ねじ止めやモールなどがなく嵌っているのがよくわかります。また初期A-trainの特徴としてドア横の手すりが廃止され、掴むためのくぼみが縦枠と一体化しています。トイレや運転台までモジュール化されているのも同系の特徴です。
福岡市地下鉄3000系
2000年代以降のA-train車両では、貫通路に全面ガラス製の引き戸が用意されているケースがよく見られます。同系は小型地下鉄ゆえ、上で紹介した815系とは全く見た目は異なりますが、ドア横の処理や天井材の構造などを見ると、モジュール構造らしさが見られます。
東京モノレール10000形
モノレールでも日立A-train構造が用いられた車両が存在します。ただ、インテリアデザインについてはモノレールという特性からか、あまりモジュール構造らしいパーツが見当たりません。荷棚受けなどもネジ穴が露出していますね。一方貫通路はガラスドアになっています。
東京メトロ10000系
関東を代表する日立アルミ車両の一つです。この車両も年次によって細かな相違点はありますが、ドア枠の構造や天井材とパイプの処理、貫通路などに日立らしさが見られます。座席間のスタンションポールが天井まで伸びているのが面白いところです。
西武30000系
こちらもメトロ10000系同様、関東のA-trainらしいボディの車両です。内装については個性が強いのですが、天井の構造などは10000系によく似ています。ドア横の縦枠部分もアルミ材が採用されていますが手すりは単独で追加されています。
阪急1000系
関西でA-train構造が積極的に導入されているのが阪急電車です。最新鋭の1000系電車を見ると、化粧板と座席のデザインでどうしても阪急らしさばかりに目が行きますが、幕板部のパネル構造などにとても日立らしい意匠性が見られます。
東武50070系
東武鉄道も日立のアルミ車が積極的に導入されました。令によってドア横などに日立らしさが見られますが、ほかにも妻面のドアのデザインがJR九州の819系に酷似するなど、設計の共通化があるのかもしれません。
相鉄20000系
最後に相鉄新横浜線開業に向けて導入された相鉄20000系電車です。こちらも設計の個性が非常に強いため、ほかのA-train車両との共通点はあまり見当たりませんが、もとよりパーツの多くがアルミ無塗装でできているあたりは、日立の得意分野かもしれません。
終わりに
鉄道車両は快適性ばかりが注目されますが、設計には本当に多くの考えなければならないことがあります。そのうえで工数削減やパーツ共通化は経営上多校のメリットがあり、そこから生まれた余裕がほかのサービスアップに活かされることもあります。
今回は通勤型電車ばかりの紹介となりましたが、今後の日立A-train構造車両にも注目していきたいところです。
その他
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