【番外】テセウスの船 京阪1000系

テセウスの船、京阪1000系 その他

冬休み特別更新

こんにちは、管理者のsosekiです。

冬休みがやってきました。今年の冬休みは不定期更新で、いつもよりちょっと多めに、短い記事を投稿したいと思っています。どうぞお楽しみください。

1、テセウスの船 とは?

ざっくり言うと、哲学のひとつです。管理者sosekiは全く哲学に詳しくはないので、細かい話はぜんっぜんできないのですが、簡単に説明すると「とある船がいろいろな経緯を経て何回かに分けてパーツを取り替えられ、いずれすべてのパーツが新しくなった時に、それは造船当時の船と同じと言えるのだろうか?」といったような話です。他にも、古いパーツを一度バラバラにして再度別の形に組み立てた時に、それは当初と同一の船なのか?という話もあるようです。

今回は、とある鉄道車両でテセウスの船に近い事例をご紹介したいと思います。

京阪1000系のルーツと特異性

京阪1000系
京阪1000系

京阪電車の車両に、1000系という車両があります。

導入は1977年と書類上表記されています。一度大規模な更新工事を経ており外観は大きく変化していますが、当時導入されていた京阪電車の車両とはちょっと異なる設計が特徴の車両です。

この車両、ルーツがとても面白いのです。誕生の経緯を辿ると、なんと戦前の1937年にまで遡ります。当時高速走行を行うために流線形を取り入れた、「1000型」という電車が製造されました。当初は特急用として運用され、最後は普通列車として1970年ごろまで運行されました。

その後、1967年から4年間かけて、700系という近代的な通勤型車両が誕生しました。この車両は、スマートな切妻ストレートボディに田の字型の窓がドア間に2連並び、窓の大きな両開き扉を備えて登場しています。そう、今の1000系と同じ構造なのです。

この700系は実は完全な新造車両ではなく、1937年から導入された1000型電車の足回りを流用し、車体だけ近代的なものを搭載して誕生しています。見た目は新しい電車ですが、足回りは戦前の吊り掛け駆動が残っていたのです。

この700系車両も架線電圧の昇圧時に足回りが耐えられなくなり置き換えられることになりますが、ボディが新しく、また冷房装置が搭載可能だったことから、今度は車体を流用し足回りだけを新製することになりました。こうして誕生したのが、今の1000系です。狙ったのか偶然なのか、1937年に初めて生まれた時と同じ形式を有しています。

つまり、1937年製の1000型車両から見ると、車体も足回りもその部品は一つも残っていませんが、2回の(書類上新製という名目の)改造を経て、同じ形式名を持っているのです。これが今回のテーマ「テセウスの船」なのです。

2代目の痕跡は色々と見られます

そんな経緯があり、現在の京阪1000系は足回りこそ比較的新しいものの、車体は旧700系電車のものがそのまま使用されています。京阪電車といえば、卵形ボディが有名ですが、1000系は卵形ボディの車両(2200系〜2600系)などと異なる仕様がいくらか見られます。先述したストレートボディや窓枠などもそうですが、車内目線で代表的な部分を2例ご紹介します。

京阪1000系の座席
京阪1000系の座席

例えば、座席を見てみます。ぱっと見は京阪電車っぽい…という感じですが、大きな特徴がパイプの座席袖です。

京阪2600系の座席

2000系以降の京阪電車は、袖部分に板型の飾りがついたデザインが採用されており、このデザインは卵形ボディの車両以外にも、1900系のロングシート改造や5000系などでも見られました。一方1000系電車は阪急や南海などに似た、シンプルなパイプを採用しています。このデザインのルーツは1650型という車両にありますが、令和3年も終わりを迎える現在では本線系統だと1000系のみに見られる仕様です。

もう一つご紹介します。

京阪1000系の客用ドア
京阪1000系の客用ドア

めっちゃ窓が大きくて縁の細い客用ドア

これも京阪1000系の特徴ですね。他社でもここまで大きな窓はなかなか見られません。桟が細すぎて、点字シールが窓ガラスに直接貼られちゃってます。窓の大きさも非常に個性的なのですが、もう一つ着目したいのがドアの幅。卵形ボディの車両では他社でも同じ1300mmというドア幅が採用されているのですが、この1000系は1200mmという、少し幅の狭いドアが使用されています。結果、ドア間が他の車両より広くなり、窓数も多く設置されています。1200mmは他社でもなかなか見ないサイズです。思いつくところだと、京急の特急型車両2100形がたしか1200mmだったと思います。少しラッシュには向かない仕様ですね。そのせいか、ドア横の幅がとても広い車両が存在します(これも種車によってばらつきがあります)。

終わりに

最近はあまり例がありませんが、割と近年まで「車体だけ更新して足回りはそのまま」「足回りは更新して車体は活かす」という流用の事例がありましたが、3代に渡って流用更新され、かつ形式名が誕生時と同じものを名乗っている車両は、京阪1000系ぐらいではないでしょうか?

最近そういった事例が少ないのは、環境配慮などエネルギー問題が高い優先順位にあることや、新造自体のコストパフォーマンスが向上しているからでしょうか。SDGsが提唱されて久しい今日この頃ですが、「新しい車両を作って排出エネルギーを抑えるほうがサスティナブル!」「否、使えるものはリサイクルしてこそ地球の未来にやさしい!」なんて議論もできそうです。これも、もしかするとちょっとした哲学かもしれません。

 

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