209系タイプのバケットシートとは?
1992年、209系の前身となる901系電車が誕生しました。モジュール構造の内装材を採用した際、着席区分が明確な片持ち式シートとして樹脂材をベースにしたバケットシートが設計されたのがこの座席の始まりです。
1人1人の着席面積が明確となる一方で、座席の硬さなどが課題としてしばしば取り上げられ続けてきましたが、座面や形状の改善を経て、いまでは通勤型の標準的なロングシート形状として大きく普及しています。
…実際、どれくらい普及しているのかふと気になったので、2025年初頭時点での都道府県別の運行状況を調べてみました。(独自調査ゆえ誤りがあればお許しいただけましたら幸いです)
都道府県別、普及状況
ということで、日本地図に着色してみました!
ご覧の通り、東日本を中心に主に東北方面へ勢力を拡大した状況となっています。一方で、西日本での普及率は低く、大阪以西ではいまのところ採用例が見つけられませんでした。これは、総合車両製作所製の車両を中心に採用されている経緯も関係しているものと思われ、西日本では川崎重工や日立、近畿車輛で製造される車両が多い傾向があるためと思われます。
ここからは地域ごとの主な採用状況を簡単にまとめたいと思います。
北海道エリア
北海道ではH100形気動車の上陸で採用例が誕生しました。この車両はJR東日本のGV-E400系と共通設計となっているのが特徴で、車内に関しては東日本仕様の座席が採用されています。
東北エリア
東北エリアのうち、北部は先述したGV-E400系の運行開始でエリアが拡大しました。岩手・宮城・山形・福島ではE721系が増備され、本形式の運用範囲でカバーされている状況です。JR以外でも仙台空港鉄道や阿武隈急行などで同様のシートが採用されていますが、これはJRと共通仕様の車両であることから起因しています。
信越エリア
信越の直流区間は115系が幅を利かせていましたが、これがすべてE129系に置き換わったことで東日本の標準的な設計思想が日常になりました。一方、電圧の壁があるため北陸エリアには同タイプの座席はまだ進出していません。
北関東エリア
北関東まで来ると、231系や233系が首都圏が乗り入れることで同タイプの車両が日常的に走っています。独自の車両としては烏山線のEV-E301系や日光線などのE131系、水郡線のキハE130系などで同タイプの座席を見ることができます。
首都圏エリア
首都圏は元東急車両のおひざ元、JR東日本のメインエリアでもあり、当たり前の存在になりつつあります。JRだと231~235系などを筆頭とし、私鉄でも東急や相鉄、都営地下鉄などで同タイプが採用されており、乗り入れ運用が盛んなこともあり見かけない路線の方が少ない状況です。
甲信越エリア
山梨県には中央線のE233系の入線が見られるほか、最近では長野県のしなの鉄道にSR1系が導入されていることから日常的な存在へと変化しました。この車両はE129系と設計共通化されているため、JRタイプの内装が採用されています。
静岡・中部エリア
このあたりではごく近年の傾向として、やはりJR東海での315系大量投入が起因しており、西は滋賀から東は静岡、南は三重までこの車両が幅を利かせるようになりました。JR以外だと、実は名鉄4000系や名古屋市営6050形などで、209系タイプの座席が意外と早く採用されていたりします。
関西エリア
車両の個性が強い関西では座席へのこだわりも強く、採用例はほとんど見られませんが、現総車製となる南海8000系ではE231系と同タイプの設計が取り入れられ、座席についても同形状が採用されました。8300系から近畿車輛製となったことから、現在は採用例がありません。そのほか滋賀では先述した315系乗り入れの実績があります。
終わりに
おそらく南海より西日本での採用例は…ないはずです。九州の305系あたりは東日本らしさもやや見受けられますが、水戸岡氏によるデザイン設計が介入し、座席は独創性を貫いていますね。
座り心地や没個性など、賛否両論も各所で見受けられるこのバケットシートですが、当初の設計思想にもある共通化メリットは確実に成果をあげており、座り心地も315系などでは思ったより好評で受け入れられているようにも見られます。平成時代の通勤型ベーシックとなった座席の今後に、引き続き注目したいと思います。
その他
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