いきなり口が悪いですね
今日はダルい車両の話をしたいと思います。
…といっても、ダリぃ車両…怠い車両ではありません。ダルい車両です。
すでにタイトルにも書きましたが、軽量ステンレス車両の「表面仕上げ」が今回のプチテーマになります。早速行ってみましょう。
この違い、わかりますか?
こちらは東急田園都市線の主力形式のひとつ、5000系電車です。
5000系電車は数次に渡って製造され、途中さまざまな理由があり仕様変更が重なり、かつ複雑な編成組み換えも多数行われた車両です。
ところでご注目いただきたいのはピンクの矢印部分です。この前後で、ステンレス車体の色が異なっているのがおわかりいただけますでしょうか?
わかりにくいですね。では、少しアップにしてみたいと思います。
…明確に、手前の車両と奥の車両で、ドア横のステンレス無塗装部分、外板の色が異なっています。手前の車両のほうが白く輝き、奥の車両は少しグレーにくすんでいます。
では、もっと間近で見てみましょう。
どうでしょうか?真横だとちょっとわかりにくいですかね。さらにズームしてみると…
ここまでくると明確に表面の仕上げ処理が異なっていることがおわかりいただけるかと思います。
この車両、左のグレーのほうがオリジナルで、右の白く輝く車両は後に増備され差し替えられた中間車両です。実はこの色の差は、ただ経年劣化の差…というわけではないのです。
ダルい=Dull
まずは左側の車体について簡単にご紹介します。(技術者ではないので、触り程度の解説になりますがご容赦を)
こちらは「ダルフィニッシュ仕上げ」と呼ばれる、表現を艶消しにする加工がほどこされた車両になります。
この仕上げは、表面にシートを張り付けたり、細かな砂の粒などを当ててざらっとした表面化するサンドブラスト加工を施したり、種類はいくらかあるようですが、いずれにせよステンレス特有の艶を押さえるために、表面をざらっとした質感に加工するものになります。
ダルフィニッシュの「ダル」ですが、英語でdull=鈍いという意味があります。よく日本語で吐き捨てるように言う「だるい」という言葉には、日本語の怠いと、英語のdullの両方が掛かっているといわれることがあります。鉄道車両の場合、決してネガティブなものではなく、ステンレス溶接時の溶接跡を目立ちにくくしたり、艶を抑えて周辺の方々などにご迷惑をかけないようにしたりといった目的で施されるようです。
ただ、ご覧のように表面がざらっとした分、汚れを拾いやすいのもたしかで、経年とともに段々煤っぽくなっていくのが難点です。この車両もアップにするとだいぶ汚れていますね。
最近の流行はBG仕上げ
一方、右側の「新しい車両」ではベルトグラインド仕上げと呼ばれる表面処理が施されています。BG仕上げなどとよく言われます。
こちらはステンレスの表面に、ランダムで不均等なストライプを施すことで、艶感を残しつつ、ギラリとした光り方を抑え、かつ汚れが付きにくく、溶接跡もあまり目立たないという仕上げです。オリジナル車両も腰部などはこのBG加工ですね。近年の車両はダルフィニッシュ仕上げをせずBG仕上げとすることで、新車のキラキラ感を保てたり、メンテナンス性を高めたりすることが多いようです。
東急5000系の場合は製造途中からBG仕上げに変更するという珍しい変遷を持っているため、編成中に2種類の仕上げが混在しています。ほかにも都営地下鉄新宿線の10-300形は1・2次車がダルフィニッシュ仕上げ、3次車以降がBG仕上げに変更されていたりします。
終わりに
ということで、今回はステンレス車両の外板仕上げ処理の違いについて着目しました。
塗装不要であったり設計コストであったりを理由にステンレス無塗装車両が急増する昨今ですが、無塗装のなかでも実は細かな仕上げのこだわりが隠れているものです。デザインは細部にまで施されているのです。そんな目線で、身近な電車を見ていただけたら嬉しく思います。
ピックアップ
懇意にしていただいているOdapedia様が以前、ステンレス仕上げについて触れた記事を書かれていたので、こちらでご紹介します。
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