酷暑残る9月ですが、暑い特集です
こんな暑い年に、涼しくない電車のご紹介記事になります。
日本の冷房車は戦前、1936年に製造された1両の食堂車から始まり、60年代には特急型で、70年代からは通勤型でも本格的に冷房を搭載するようになりました。90年代には大手私鉄や都市部のJRのほとんどが冷房車に移り変わっています。
こんな酷暑の令和時代ですが、実はまだ非冷房のまま活躍している車両が日本のあちこちにあります。数えれば結構な数がありますが、その中から今回は通勤型車両を4つ選びご紹介したいと思います。ぜひガリガリ君を食べながらご覧くださいませ。
令和に残る非冷房車4選
その1…三岐鉄道270系

もとは近鉄電車で、ナローゲージとして有名な三岐鉄道北勢線。区分の異なる複数の形式が混在して走っていて、近鉄時代は冷房化率0%でした。三岐鉄道移管後に一部の車両へ床置クーラーが設置されましたが、これまた形式を問わず非冷房のまま残っている車両があります。うち、両開き扉の通勤型車両にあたる270系も一部が非冷房で残っています。

車内はこんな感じで、パッと見は寸法が一回り小さい通勤型車両です。天井を見ると車両が狭いことから、蛍光灯が中央1列のみとなっており、その合間にラインデリアと呼ばれる送風機が設置されています。

外気を取り込み、このファンが左右に首を振りながら車内に風を送り込むのですが、あくまで冷房機能はないため、夏場は窓を開けることが必須。隣の車両が冷房車のことも多いため、非冷房車はガラガラになっていることもあります。懐かしい木目調の化粧板と相まって、昭和50年代頃の近鉄にタイムスリップしたような気持ちになります。
その2…山万1000形

ユーカリが丘線と呼ばれる新交通システムの車両で、コアラ1号~3号の3編成が存在します。首都圏に残る非冷房車としては有名で、夏になるとしばしばSNSに取り上げられる車両です。

車内は新交通システムらしく中央1か所のみの出入り口となっており、ロングシートが左右に展開しています。蛍光灯は2列で、中央に途切れ目なくラインフローファンが設置されています。ここから風が送られますが、それだけでは生ぬるく、上部が開く窓をすべて開けて運転されています。

先述の通り、送風口は車両全長に及ぶため、圧迫感のないすっきりとした印象の天井周りになっています。天井自体が低いこともあり、意外と直接的に風があたるので風量はしっかりと感じられます。

片道わずか十数分とはいえ都会の夏は厳しく、車内や駅では冷たいおしぼりやうちわが無料で配布されていることも、ユーカリが丘線のある意味風物詩になりつつあります。都心からすぐに乗れる非冷房車、置き換えの噂もありますので実は体験機会は多くないかもしれません。
その3…弘南鉄道7000系

当たり前ですが60年代には東京でもクーラーのない車両に通勤客が満員で乗っていたわけですが、その当時の姿をほぼそのままに残して非冷房で運転されているのが弘南鉄道。すべての営業車両が元東急7000系電車で、そのすべての車両が非冷房のままとなっています。

車内の様子がこちら。元々ベージュ系の化粧板が採用されていたことに加え、水色とオレンジというポップな座席も相まって、あまり古さは感じませんが、天井に目をやれば扇風機がぶら下がっていますね。

天井をクローズアップ。大変シンプルな構造で、こちらはラインフロー型ではなく、数か所に空いた換気口にぶら下がる形で、東芝製の首振り扇風機がブンブン回っています。東急では比較的最近まで扇風機がついた車両が活躍していました。

…混雑した車内では、髪や衣服の乱れを差し置いて、直接的な風こそ一番快適だったんでしょうね。本当に当時の車内事情がほぼ原形を保ったまま残っている貴重な車両と言えます。
その4…札幌市営地下鉄5000形

最後は急に近代的なデザインの車両です。お察しの通り平成に入ってから製造されたVVVFインバータ制御車両で、タイヤ式の地下鉄です。実はこの車両、冷房装置が搭載されていません。

内装についても非常に広々としていて落ち着きのあるデザインで、大型袖仕切り、1枚ガラスの窓、フルカラーLEDの案内表示など、近代的な装備を備えています…が、実は冷房装置がありません。北海道の夏は涼しく、一部区間を除いて地下区間を走行していることが理由に挙げられます。

天井を見ても、いまどきのラインフロー型の送風口が連ねており、一見すると非冷房車には見えませんが、天井がとても高く、実は冷風道が通っていません。インバータ制御の電車=冷房車みたいな常識が頭の中にあると、だんだん感覚がバグってきます…。
そのバグをより感じられる写真を最後に1枚おまけでご紹介。

こちら東豊線の9000形の車内。2014年から製造された最新鋭車両で、ガラスを使用した袖仕切りや貫通路、LCDディスプレイ、スタンションポールなど先進の設備が揃っていますが、なんとこの車両も非冷房。札幌の地下鉄は現在冷房化率0%を誇っています。
ただ、こちらも時期新型車両ではクーラーの搭載が検討されているという話もあります。今年の夏は、北海道も無茶苦茶に暑かったですからね…。
終わりに
10月になったら、そろそろ涼しくなってほしいですね…
その他
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